集客手段として活用したInstagramに可能性を見いだす
独立した当初は、物販や海外から仕入れた商品をオンラインで販売するEC事業が中心でした。自社の商品をより多くの人に知ってもらうため、溝口氏はInstagramを集客に取り入れます。
Instagramは、画像や短い動画を通じて商品の雰囲気や魅力を直接伝えやすい媒体です。実際に運用したところ、商品への反応や売上につながる手応えを得ることができました。
この経験から、溝口氏はInstagramが単なる交流サービスではなく、企業や個人が商品を販売し、ファンを獲得するための重要なマーケティング手段になると考えるようになります。そこで、物販を中心としていた事業内容を見直し、SNSを活用した集客や販売支援へと方向性を変えていきました。
その後、Instagramによる情報発信を強みとするアクセサリーブランドを立ち上げます。商品の見せ方や投稿内容を工夫し、SNS上で認知を広げることでブランドを成長させました。
育成した事業は2019年に売却されます。自ら事業を立ち上げ、成長させたうえで第三者へ引き継ぐところまで経験したことは、溝口氏にとって大きな転機となりました。経営者としての実績だけでなく、新しい事業へ投資するための資金や自信を得る機会にもなったといえるでしょう。
実践経験をもとにバズカレッジを立ち上げる
アクセサリーブランドの売却後、溝口氏が新たに取り組んだのが、Instagramの運用方法を学べるバズカレッジです。
バズカレッジでは、アカウントの設計や投稿内容の考え方、フォロワーとの関係づくり、収益化に向けた運用方法などを学べる仕組みを提供しています。溝口氏自身が物販やブランド運営でInstagramを利用してきたため、実際の経験を踏まえた内容をカリキュラムに反映できる点が特徴です。
サービスの準備には長い期間をかけず、構想から1〜2か月ほどで教材や支援体制を整えたとされています。市場の変化を捉えた際に、検討だけに時間を使うのではなく、まず形にして提供を始める姿勢が、株式会社BUZZの事業展開にも表れています。
バズカレッジは、Instagramを活用して仕事や副収入につなげたい人から支持を集め、受講者数は2万人を超える規模へ成長しました。
株式会社BUZZは、講座を販売するだけで事業を完結させているわけではありません。学習を通じてスキルを身につけた受講生に対し、企業のSNS運用に関わる機会を提供する取り組みも進めています。
企業側にはSNSを任せられる人材を紹介し、受講生側には学んだ技術を実際の仕事で活用できる場を用意する形です。教育と就業機会を結びつけることで、スクール事業からSNS人材の育成・活用を支えるプラットフォームへと事業領域を広げています。
素早く動ける組織体制が成長を支える
株式会社BUZZが短期間で事業規模を拡大できた背景には、営業力だけでなく、社内の意思決定方法にも特徴があります。
同社は業務委託を含め、約100名規模の営業組織を構築しています。商品やサービスの魅力を伝え、顧客の課題を把握する営業部門を厚くすることで、事業の拡大を支えてきました。
一方で、会社の規模が大きくなると、すべての判断を代表者一人に集める方法では対応が遅くなります。そこで株式会社BUZZでは、複数の幹部へ判断権限を持たせ、担当領域については各責任者が決定できる体制を採用しています。
新しい企画や改善案が出るたびに社長の承認を待つのではなく、現場に近いメンバーが判断することで、サービスの開発や施策の実行までの時間を短縮できます。
流行や利用者の行動が短期間で変化するSNS市場では、数か月前に有効だった方法が通用しなくなることもあります。そのため、状況の変化に合わせて素早く方針を修正できる組織は大きな強みです。
責任者へ権限を渡すためには、経営陣とメンバーの間に十分な信頼関係が必要です。溝口氏が自らすべてを管理するのではなく、周囲に判断を任せていることも、事業を一気に拡大できた理由の一つといえるでしょう。
上場企業グループへの参画で新たな成長段階へ
株式会社BUZZは2024年11月、上場企業のグループへ加わりました。
ベンチャー企業が上場企業グループに参画することで、これまで以上に安定した経営基盤や企業間のネットワークを活用できる可能性があります。株式会社BUZZが持つSNSマーケティングの知見と、グループ企業が持つ顧客基盤や経営資源を組み合わせることで、法人向け事業をさらに拡大することも期待されます。
同社は現在、個人向けの教育サービスに加え、企業のSNSアカウント運用やマーケティング支援にも力を入れています。SNSを運用したいものの、社内に知識を持つ担当者がいない企業は少なくありません。
こうした企業に対し、戦略づくりから投稿制作、分析、改善までを支援できれば、バズカレッジで蓄積したノウハウを法人市場にも広く生かすことができます。
事業を変化させながら成長を続ける
溝口氏のこれまでの歩みを見ると、一つのビジネスに固執するのではなく、顧客の反応や市場の動きを見ながら事業内容を変えてきたことが分かります。
携帯販売の現場で仕組みに着目し、副業として物販を始めました。その後は物販の経験をSNSで発信し、情報を求める人へノウハウを提供するようになります。独立後はEC事業に取り組み、Instagramを活用した集客で成果を得たことから、SNSマーケティングを事業の中心へ移しました。
つまり、最初から現在の会社の形を明確に描いていたのではなく、目の前の需要を捉えながら、次に必要とされるサービスをつくってきたといえます。
溝口氏は、過去の経験について大きな失敗だったと捉えることは少ないと語っています。結果が想定どおりにならなかった場合でも、その経験を次の判断材料として活用してきたからこそ、複数の事業へ挑戦できたのでしょう。
株式会社BUZZは、現在の売上高30億円規模から、今後3年間で50億円規模への成長を目指しています。今後は法人向けサービスの拡充に加え、AIを取り入れた業務効率化や運用支援の自動化も進めていく方針です。
携帯電話の販売員としてキャリアを始めた溝口氏は、現場で見つけた小さな商機を事業へ変え、物販、EC、SNSマーケティングと活躍の場を広げてきました。市場の変化を素早く読み取り、必要に応じて事業を組み替える姿勢が、株式会社BUZZの成長を支えているといえるでしょう。